江戸時代前期に宮廷で制作されたと思われる「源氏物語図屏風」のうち、本年度は、霊元院が撰じた屏風についての調査を主に行った。基本的には国文学研究資料館に所蔵されているマイクロフィルム化された資料を調査し、原典にあたるという方法をとった。文献のみでの資料としては、宮内庁書陵部、福井県立図書館、大阪青山短期大学、国立歴史民俗博物館等に所蔵される「源氏十二月詞書」(または「源氏十二月絵詞」)についての調査をおこなった。各所蔵先に赴き、資料に関するデータを収集し、文献複写依頼を行った。また、当該資料について詳細に翻刻・本文異同等を行った。 また、絵画資料として京都大学文学部所蔵の「源氏十二月画粉本」についての調査を行った。京都大学文学部に赴き、資料のデータを収集し、文献複写依頼、および確認作業を行った。 上記の調査・研究により、霊元院御撰とされる「源氏十二月詞書」が当時の宮廷と江戸幕府とを結び付けるものであったことが判明し、このことについて、文献紹介(旧有栖川宮本を中心に主要三点の文献に対する翻刻および本文異同)および成立に関する考察を論文にまとめた。 本年度の研究の大きな成果としては、マイクロ資料から原典にあたるという調査の過程において、国文学研究資料館・宮内庁書陵部・国立民俗博物館の三館それぞれの所蔵データで所在が不明になっていた通称・高松宮本「源氏十二月詞書」が宮内庁書陵部で《高松宮家旧蔵旧有栖川宮本》として存在していたことが判明した。 その他、土佐派の絵画に関する研究については、本年度は着手することができなかった。
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