1)平成15年8月1日〜9月29日までロシア人文大学歴史人文学部D.マゴメドワ教授と共に、20世紀ロシア文学、とりわけベールイとブロークの著作における「空間と人間」の表象の共同研究を行った他、世界文学研究所の研究者と意見交換し、同資料館で文献収集・草稿研究を行った。平成16年度も引き続き共同研究を行い、近日中に、最初の成果として「アンドレイ・ベールイのモスクワ論」を発表する予定である。 2)また、この研究の重要な特徴は、文学という枠組みを超えて同時代の文化・芸術との比較を行うことにより、広範な視点から20世紀文学を考察することである。 今年度は、文学と芸術の関連がとりわけ高かった2つの時期に焦点を絞り、第一に、1920〜30年代の絵本について、論文を『幻のロシア絵本』に発表した。この論文は、最新の学術研究を踏まえた上で、テキストとイメージの両方からロシアアヴァンギャルドの絵本研究を行い、主に「森」というイメージが各作家の作品においてどのように展開されたかを論じたもので、「空間と人間」というこの研究の課題に沿ったものとなっている。 第二に、1960年代に始まったモスクワ・コンセプチュアリズムとソッツアート(どちらも文学と美術にまたがる芸術運動だった)の研究として、論文を『コマルとメラミッドの傑作を探して』に発表した。ロシア、ソ連という空間が、アメリカに亡命したロシア系ユダヤ人アーティストの作品においてどのように変容し、どのようなメタファーを担っているかを論じたもので、この論文を発展させて、日本ロシア文学会で「ロシア系ユダヤ人アーティストの現在」という報告も行った(11月)。
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