本年度の研究は英国セントアイヴズやケンブリッジにおける資料収集を手始めに、「即興性」の問題の考察を進めることが中心となったが、モダンダンスを中心とした舞台芸術に関する考察も若干まじえることとなった。また日本語文学の作家についての研究も平行しておこなわれ、その成果は2004年5月刊行予定の著作において公表される予定である。 メランコリーやアパシーの問題については、とくにヒステリーとの関連からの考察をすすめることともなった。これは英詩人T.S.エリオットの著作についての研究において明らかになってきたもので、言説の主体が自らの発言とどう関わっていくのかという問題に焦点をあて、それを本人の持っている精神病理に対する意識とからめて説明することが肝要となる。この問題は夏目漱石における胃と神経との問題とからめて考察することも可能と思われる。 「即興性」の問題はスポーツその他周縁分野における観衆と参加者との関係性の問題としても考察されてきた。計画書にあったように、劇場やスポーツ施設の構造と、その中で行われる実技の表象するものとの有機的な依存関係についての考察は次年度以降の研究でさらに考察をすすめていく予定である。 なお、即興の問題についてはとくにアメリカ研究からの視点も可能で、その考察の過程でナショナリズムと即興がイデオロギーとしてどう結びつくのかといった問題にも光があてられる予定である。
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