論文「"Going Mad" vs. "Going Fantee":Joseph Conrad Grant Allenのアフリカ小説の比較」においては、Joseph conradの小説"Heart of Darkness"(1899)が出版された当時の書評の中でGrant Allenの作品と結び付けて論じられていることに注目し、Allenのアフリカ小説と"Heart of Darkness"の比較を行い、さらに当時のベルギー国王Leopold IIや編集者Edward Garnettの文章も分析して、この時代の西洋人の「アフリカ観」の特質を示した。この当時のほとんどの西洋人が、いわゆる「黒人」に対する「白人」の退廃を描いていることを示した。 さらに論文「ジョウゼフ・コンラッドとエドワード・アーヴィング」においては、Conradが1900年前後に作品を寄稿した雑誌Blakwood's Magazineの当時の主要な寄稿者だったEdward Irvingの文章に注目し、東南アジアを描く際の描写の仕方などに共通性が見られることを示して、当時のイギリスにおける東南アジア関係の言説の特徴を明らかにした。この二人の作家はいずれも「未開地の探検」への欲望を吐露しており、それ自体は帝国主義的な言説の一環であるが、しかしそれが西洋以外の文化を知ることで西洋の文化を相対比し批判することにも繋がっている、ということを明らかにした。
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