本年度は6月と3月に2度、それぞれ10日間程、科学研究費を用いてフランスに調査旅行を行い、おもにフランス国立図書館において19世紀医学および哲学に関する文献の調査を行った。また、現地のフローベール研究者達と打ち合わせを行い、『ブヴァールとペキュシェ』の「読書ノート」データベース化のための研究プロジェクトを、フランス国立科学研究センター(CNRS)の近代テクスト・草稿研究所(ITEM)を母体に本格的に始動させた。さらに、そのまとまった研究成果発表の場として、2006年6月にフローベール・シンポジウムを1週間開催することを決定、そのための企画委員会を立ち上げ、私自身も日本側通信員として委員会に参与することとなった。 6月の滞仏の際には、パリの高等師範学校で開かれた国際シンポジウム「フローベール、影響とレフェランス」に参加、フローベールの日本における受容について「フローベールと日本の文芸批評」という題の発表を行った。なお、この発表の原稿は本年度の立教大学フランス文学科の紀要に掲載されている。また。3月の滞仏の際には、おもに19世紀前半のフランス医学を代表するビシャに関連する文献を調査、その研究成果は2004年9月に刊行予定の『雑誌ギュスターヴ・フローベール4号』(ルーアン大学「フローベール・センター」)に発表の予定である。さらに19世紀の文学空間・医学空間とフランス現代思想との関係も考察中であり、やはり2004年9月に日仏哲学会において「ミシェル・フーコー、フローベール、ビシャ」(仮題)と題した発表を行うべく現在準備を進めている。
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