1.研究範囲の拡大 本研究では研究範囲を英語文学における「日本」表象と人種とジェンダーに限定していたが、これに現代日本文学における「日本」表象と人種とジェンダーを加えたい。理由は、『蝶々夫人』等の諸作品で描かれる文化的範疇化された日本人女性の姿が、多くの日本人作家により意図的に読み替えられているためである。越境的な人種とジェンダーの問題が、英語圏文学にとどまらず日本語文学にも影響を与えている点に注視することは、国境を越えた脱領域的な文化を研究する上で、きわめて重要なことである。 2.研究成果の発表経過 (1)2003年7月に催された日本国際文化学会全国大会において共通論題「多文化主義の諸相」の下、アメリカ社会における白人の人種性について報告の機会をもった。本報告で注目したのは、「白人」のもつ人種的特徴が他人種-日系人、そして日本人をも含む-の人種的特徴の陰画だという点である。今後は、アメリカという多様な人種社会で歴史的に形作られてきた人種意識が、どのようにポストモダニズム文化における人種表現に影響を与えているのかを、「日系人」および「日本人」の表象を中心に考察し、研究を継続する。 (2)2004年1月に催された日本英語コミュニケーション学会研究フォーラムにおいて、「二つの言語のはざまで:「日本」表象をめぐる文化と翻駅」という表題の下、研究発表を行った。そこでは、英語等の外国語を媒体に創作をする越境的な日本人女性作家に焦点をあて、母国語以外の言語で表現される「日本人」の意識がどのような文化的影響を英語、もしくは他の外国語と日本語の双方に与えるのかを考察した。本発表をもとに準備中の論文では、英語第二公用語論等にみられる日本文化における英語の役割も論じる予定。
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