19世紀半ばから後半にかけて人気のあった雑誌、Godey's Lady's Book、Atlantic Monthly、Harper's Monthly Magazineなどを中心に、障害者に焦点を当てた大衆向けの読み物(小説、詩、エッセイ等)を調べた。南北戦争という大戦によって、心身に障害を負った者も少なくなかったであろうが、それが小説等に反映することは極めて少なかった。むしろ、障害(特に視覚障害が多い)を持つキャラクターは女性が多く、敬虔、純粋、誠実、従順、親子愛などを強調した人物描写がされ、当時カルト的に信奉されていた"True Womanhood"と結び付けた表象になっていることが多いことが分かった。そういった雑誌の読者は所謂中流階級層で、当時産業革命により女性労働者が急速に増加していく社会状況の中、強健であるべき労働階級の女性と読者層を区別し、はかなさ、繊細さを極端に体現したものが、身体障害という表象となったと思われる。 高齢者、障害をもった男性の描写はかなり少なかったが、この場合は、非常に孝行息子であったり、特別な才能を持っていたり、極端な例が多く見られると共に、所謂WASP以外であることが多かった。Atlantic Monthlyにおいては、1860〜70年代、ダーウィンの進化論やAmericanismに関する論文が連載され、その合間に掲載されている読み物に登場する身体や精神に障害をもった登場人物は、人種、民族や階級の違いが明確な場合がよく見られた。また、種々の障害に関する説明や情報(現代人の目で読むと、かなり偏見が入っていると思われることもある)、当時流行していたDime Museum(民族の違いや身体の違いを見せ物にしたものもあった)に関するエッセイも散見され、その言葉使いからも、「ノーマルな身体や精神」の基準を編集側と読者が無意識の内に共有していたことが分かった。
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