今年度はまず、これまで収集してきた「満洲国」の文学雑誌・大衆雑誌といった一次資料について、目次のデータベース化作業を開始した。今年度科研費で購入したマイクロフィルム資料20点も、今後加えて行く予定である。 上のデータベース化作業を通して得られた知識をいかし、2003年9月13日に開催された「満洲国」文学研究会の第5回定例研究会において研究発表をおこなった。テーマは「「満洲国」成立前後の大連における中国側文化活動--1920年代後半の中文雑誌『新文化』(のちの『青年翼』)と日文雑誌『満蒙』から」である。そこでは、日本語文化と中国語文化とが「満洲国」でどう表象されたかという問題をめぐり、問題の起源としてそれ以前の租借地「関東州」を指摘した。この視点を持つことで、「満洲国」の言語文化状況をより長いスパンで検証でき、より広く中国東北文化研究者との研究交流を通した実態解明にもつながるはずだ。なお発表内容の概要は研究会のホームページでも公開している。 http://members.at.infoseek.co.jp/qiao_ben/mbk/teireikai/5.htm 本研究課題のもとに研究代表者が目指すもう一つの作業として、中国人作家、爵青による小説の翻訳集刊行がある。すなわち上のデータベース化とは逆に、微視的な視点から中国語テクストの中に日本人像を検証する作業である。今年度はデータベースを頼りに、訳集に収める予定の小説の日本語訳を完了した。来年度をめどに出版にこぎつけたいと考えている。
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