今年度はアフリカの大衆文化研究や映像研究にかんする資料を収集、調査し、1999年に提出した博士論文の一部にそれらの新しい知見を反映させて、論文を2本完成させた。 また、3月にガーナに赴き、ガーナ大学で統計経済社会科学研究所のアーネスト・アピア氏の協力を得て、資料収集にあたった。とくにアフリカ研究所の図書館、映像資料館では、ガーナの伝統文化や現代文化、大衆文化にかんする貴重な資料を入手した。また、NGOグループよりHIV/エイズにたいする啓蒙的な映像資料を入手した。現在、アピア氏の協力を受け、HIV/エイズをテーマとするテレビドラマの映像資料を収集中である。さらに、ガーナ大学のドラマ・スタジオで学生主体の現代劇を観劇したり、学生グループとともにコミュニティー劇に参加したりした。とくにHIV・エイズをテーマに演劇プロジェクトをおこなった学生から、直接話を聞くことができた。上演芸術学部のサンディー・アーカスト氏からは、コミュニティー劇にたいする貴重な示唆を得た。また、大衆即興劇の映像芸術を担当するアーティストに会い、話を聞いた。残念ながら大衆即興劇自体は時期がずれ、観劇できなかったので、またの機会を設けたい。 以上の調査旅行から受けた全体的な印象であるが、現在ガーナでは、開発を目的としたコミュニティー演劇が脚光を浴びているものの、これらの演劇は、演劇自体としてみればアートのもつ力を存分に発揮しているとは言いがたい。今後、これらの演劇と伝統芸能を有機的に融合させ、文芸劇や大衆芸能の技術も生かせるような総合的なアプローチが必要ではないかと思われる。 この調査旅行の報告を黒人研究の会で発表する予定である。
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