今年度は昨年度に引き続き、アフリカおよびガーナにおけるHIV/エイズの状況と演劇事情にかんして広範で背景的な情報収集を行うと同時に、とくにアフリカの映像・演劇文化とセクシュアリティに重点を置いて情報収集を行った。 とくにセクシュアリティにかんしては、HIV/エイズにならぶ健康問題である女性性器切除をテーマにした論文という形で結実させた。 また、昨年度の3月に実施したガーナにおける調査旅行で得た知見を、10月に日本黒人研究の会の月例会で発表した。黒人文化を人文・社会科学の視点から研究する研究者からフィードバックを受け、これまでの文字テキスト分析による研究だけでなく、総合芸術を分析する必要性、さらにフィールドワークによる社会分析の必要性があることがあきらかになった。さらに所属部局においても、文化人類学者との研究会で発表する機会を設け、社会システムの分析の手法を表象分析に取り入れる可能性を探った。発表の成果の一部は、日本黒人研究の会の学会誌『黒人研究』に公表される予定である。 さらに12月から1月にかけて、ガーナにて調査旅行を行った。前年度は演劇活動全般を調査したが、今回は大衆芸能に焦点を当てて調査を行った。独特の看板による宣伝の仕方、芸能バスによる集客の仕方、夜の9時ごろから明け方の5時ごろまで続くダンスバンド演奏と演劇など、演劇自体の内容を分析する以上に、イベントとしての構造を体験することで入々が知を身体化する様態を考察する必要性が明らかになった。
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