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2004 年度 実績報告書

韓国・朝鮮における近代ナショナリズムの興隆と近代文学の成立〜その批判的検討

研究課題

研究課題/領域番号 15720076
研究機関県立広島女子大学

研究代表者

李 建志  県立広島女子大学, 国際文化学部, 助教授 (70329978)

キーワード韓国 / 朝鮮 / 近代文学 / ナショナリズム / 文学史
研究概要

朝鮮における近代的ナショナリズムの成立を、文学史の成立という観点から考察した。まず、朝鮮で最初に「文学史」が書かれはじめるのが1920年代の初頭だが、それが近代文学を対象にするようになるのは1930年代の半ばを待たなければならない。すなわち総動員態勢と呼ばれる、戦前の(朝鮮の)植民地時代の末期に朝鮮の近代文学史が成立したと見てよい。これは、朝鮮文学が自らが歩んできた道を振り返る行為であると同時に、朝鮮が異民族支配を受けることで「朝鮮とななにか」を必然的に問わなければならなかったことと関連すると思われる。
解放後(1945年8月以降を朝鮮では「解放後」と呼ぶ)の朝鮮半島では二つの国が成立し、双方で個性的な「民族文学史」が成立していく。まず韓国では、解放前(戦前)の文学史叙述を基礎に、文学史が成立し、とくに近代文学史についてはプロレタリア文学を縮小ないし無視する方向へと進んでいく。それに対して北朝鮮では、社会主義国家であるという建国理念の問題と、韓国との対抗意識によって、韓国での文学史叙述と真っ向から対立するものとなっていった。それは越北作家(北朝鮮を選択し、38度線をわたってきた朝鮮を活動拠点とした作家)によってなされる。解放前から近代文学史の業績を積んできた林和は、韓国の近代文学史研究に多大な影響を与えるが、越北することで韓国で表面上は消されてしまう。この作家が北朝鮮で「米国のスパイ」という容疑で処刑されるのだが、北朝鮮はここで文学史叙述そのものを失う。ひとつには韓国でオーソライズされた文学史を使うことができない状態であり、またもうひとつには北朝鮮を裏切った(とされる)林和の業績は葬らなければならない。ここに新たな文学史叙述の必要性が生まれる。韓国の文学史にもエスノセントリズムという問題があるが、北朝鮮という要因を見ることでその成立をより立体的に見ることができるであろう。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2004

すべて 雑誌論文 (3件)

  • [雑誌論文] 総動員体制化の朝鮮における支配言語と母語-崔載瑞をつうじて2004

    • 著者名/発表者名
      李 建志
    • 雑誌名

      比較文学研究 第84号

      ページ: 32-44

  • [雑誌論文] 「民族文学史」に対する覚書-林和、白鉄、安含光をめぐって2004

    • 著者名/発表者名
      李 建志
    • 雑誌名

      高麗美術館研究紀要 第4号

      ページ: 47-54

  • [雑誌論文] 南北韓文学史の共通点と差異点-林和、白鉄、安含光を中心に2004

    • 著者名/発表者名
      李 建志
    • 雑誌名

      高麗美術館研究紀要(ハングル版) 第4号

      ページ: 45-57

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公開日: 2006-07-12   更新日: 2016-04-21  

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