本研究は、旧満洲国における中国人作家とその文学活動の全般的な状況を把握し、解明することを目指しています。具体的には、中国人作家とその文学活動に関わるすべての事象、事件、組織、人物、作品、発表メディアなどをマクロ的に明らかにしていき、この分野の研究基盤を構築することを目的としています。 今年度は昨年度に引きつづき、資料の収集や整理、分析を中心に研究を進めてきました。具体的には昨年の夏に、中国北京市の北京国家図書館と大連市の大連図書館へ資料調査をしてきました。目的は「満洲国の文学状況」に関する基礎資料の探査です。調査期間は2004年7月28日〜8月6日(10日間)です。調査の結果、両市図書館所蔵の当時の新聞や雑誌のマイクロフィルムおよび書籍などを発見し、一部複写または購入してきました。これらの研究資料について、現在は整理・分析の作業を中心に研究を進めているところですが、一部は中間の研究成果として公表しています(後記)。今後、現地での補充調査を含め、早ければ来年度に当面の研究成果として『「満洲国」中国人作家評伝』(仮題)をまとめたいと考えています。 今年度の特筆すべきことは、2001年春に発起人として仲間とともに立ち上げた「満洲国」文学研究会として、旧「満洲国」で活躍していた中国人の著名作家梅娘氏と、旧植民地文学研究の第一人者、北京社会化学院文学研究所所長の張泉氏を日本に招聘したことです。一週間弱の滞在中に慶応大学や明治学院大学にてそれぞれ講演していただき(明治学院大学では「満洲国文学研究会第7回研究発表例会」のプログラムとして)、大勢の来場者から好評を得ました。このような人的交流活動を含め、今後もいっそう研究を深めていきたいと考えます。
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