本年度は「アイヌ語の言語政策・研究・教育についての調査」を目標に立てた。第一に「国、北海道、道内市町村でアイヌ語に対して取られている政策(制度、姿勢、態度なども含む)についてその骨子をまとめると同時に、北海道各地のアイヌ語教室、アイヌ語を授業科目として開講している全国の大学を訪れ、そこで用いられている学習教材、依拠する教授法や言語政策についての資料を収集すること」、第二に「収集した資料を『アイヌ語の歴史』、『基礎語彙』、『基礎文法』、『言語政策』、『学校での実践』、『共同体での実践』、『学習教材』等の項目に従って整理し、それぞれを独立した章とする報告書を作成すること」を具体的な実施計画として掲げた。 結果的に、第一・第二の計画とも七割から八割の達成を見ることが出来た。第一の計画に関しては、アイヌ語に対して取られた言語政策について凡その理解を得ることが出来、アイヌ語の授業を開講する主な大学での調査・資料収集も実現したものの、アイヌ語教室を十分に訪れることが出来なかった。相手方と研究従事者の時間的な制約から、全道に14ある教室のうち僅かに四箇所を訪問するに留まった。 第二の計画に関しては、『アイヌ語の歴史』、『基礎語彙』、『基礎文法』、『言語政策』についての資料が十分に収集で出来たのに対して、『学校での実践』、『共同体での実践』、『学習教材』についての資料はそれに比べて十分に得られなかった。そのため、後者の項目については今後の更なる調査・収集に望みを繋ぐこととし、『アイヌ語の歴史』、『基礎語彙』、『基礎文法』、『言語形策』を個々の章とする内容の報告書を作成した。このような内容が揃った文献は、和文で書かれたものに比べて欧文によるものが極端に少ないことを踏まえ、本報告書は全て英語によるものとした。また、それに伴って収録した基礎語柔の章は、『アイヌ語・英語辞典』の形式とした。
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