研究概要 |
本研究課題は,カナダのブリティッシュ・コロンビア州クイーン・シャーロット諸島スキドゲイトで話されるハイダ語スキドゲイト方言(以下,ハイダ語とする)の形態統語法を中心とした記述研究と,言語類型論的観点からみたハイダ語の特質を考察することを主たる目的とするものである.本年度の研究成果は,大略以下のようにまとめられる. (1)2003年8月より9月までの1ヶ月弱,上記の地に滞在し,ハイダ語話者4名の協力を得て,形態統語法を中心とした調査を行なった.調査の概要は,以下の通りである. 1)統語法の解明のために,ハイダ語の談話資料を蒐集した. 2)それぞれの談話資料を文,語,形態素に分析する作業を通じて,ハイダ語の統語法における問題点の整理を行なった.具体的には,主語の標示,追加表現を導く要素と語順の関係など. 3)とりわけ複雑な様相を呈する動詞の形態法に関わる接辞の機能を明らかにした. (2)辞書作成の基礎作業として,動詞の意味分析に関する調査を行なった. (3)音声資料の永年保存を図るため,過去のアナログによる音声資料を逐次CDやDATなどのデジタル媒体に変換する作業を行なった. (4)現地調査での〓を補うために,アメリカ哲学会(アメリカ合衆国ペンシルベニア州フィラデルフィア)所蔵のハイダ語資料(フランツ・ボアズ,エドワード・サピアによる語彙集など)の整備を図った. (5)ハイタ語の言語類型論的特質を考察するために,北米北西海岸地域を中心とする諸言語に関する文献を蒐集した.
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