今年度の研究計画は、新たなデータ構造と確率過程を導入した自然言語のダイナミック・セマンティクスおよびタイプ理論の研究であった。それを実現するために、先ず、「双対代数(coalgebra)」というデータ構造の抽象化構造とその様相論理の研究、確率過程への応用をサーベイし、「一般化Kripke-Mossモデル」というデータ構造を提案し、「様相従属(modal subordination)」のダイナミック・セマンティクスに応用し、「京都科学哲学コロキウム例会」にて発表した。また確率過程を包含した一般化Kripke-Mossモデルを用いて、日本語のEvidential表現のダイナミック・セマンティクスに応用し、国際学会「Language Under Cetainty」(京大会館・京都大学)にて発表した。また、確率過程を導入した一般化Kripke-Mossモデルを用いて、「Chance fluctuation」および「Stochastic Scenario」というデータ構造を提案し、その論理である「Logic of Chance Discovery」を提案し、現在、雑誌論文として投稿中である。また「依存疑問文・応答文(Dependent Questions and Answers)」のダイナミック・セマンティクスを提案し、国際学会「Logic and Engineering of Natural Language Semantics」にて発表し、論文は出版準備中である。また、その学会はダイナミック・セマンティクスの国際学会として本人が日本人工知能学会の援助の下、開催した。また、一方で、タイプ理論の「レコード」および「レコード型」を用いて新たな自然言語のタイプ理論を考案し、タイプ理論に基づいたプログラミング言語「Standard ML」にて実装した。この枠組みを「型理論的レキシコン」と呼び、その論文は今年度の大阪大学言語文化部のレポートとして発表予定である。
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