研究概要 |
本研究は,近世初期に出版された「夢梅本倭玉篇」の漢字字体について調査し,既に画像データベース化している「キリシタン版落葉集」「易林本節用集」の漢字字体と比較することを目的とする。 本年度は「夢梅本倭玉篇」の本文入力を進めながら,本文のスキャニングと文字画像切り出しを行った。「夢梅本倭玉篇」の著者である夢梅は「易林本節用集」の著者である易林と同一人物であるとされるが,両辞書の掲出漢字や掲出字体については相違しており興味がもたれる。 室町時代から江戸時代にかけて流通した「倭玉篇」は異本が多いことで知られるが,今年度は国立国会図書館蔵の木活字版「倭玉篇」二種(慶長刊)および,国立公文書館蔵(内閣文庫)の木版「倭玉篇」二種(慶長刊)も調査し,マイクロフィルム焼き付けを入手して,印刷方法との関連も含めて夢梅本との比較が可能なように準備を進めている。 また,木版および活字版の「倭玉篇」を調査したことで,印刷方法と漢字字体との関連についての関心が生まれ,先に調査した「易林本節用集」(木版本)と「キリシタン版落葉集」(金属活字版)の漢字字体について印刷方法の相違と併せて考察した発表を「キリシタン版落葉集と易林本節用集の字体注記--印刷方法との関連から--」(第5回「書物・出版と社会変容」研究会2004.1)にて行った。また「易林本節用集」の字体注記についての論文が「易林本節用集と字体注記」として近く『国語国文研究(北海道大学国語国文学会)』に掲載の予定である。
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