今年度は本研究に使用する声明譜を収集するため、大学、図書館、寺院が所蔵する声明譜の調査を中心に活動した。また音韻史・仏教音楽に関する研究文献並びに資料・調査用の計算機等を購入し、研究の基盤を固めた。調査は計5カ所について行い、それぞれ資料を閲覧し、可能ならば撮影・複写を行った。それぞれの調査の概要を次に示す。 第一回調査東京大学文学部国語研究室 平成15年8月7日〜8月8日。最も古い譜の形態を留める講式資料として著名な『大慈院本涅槃講式』を閲覧した。この譜は既に東京大学国語研究室資料叢書15に刊行されているが、本調査により朱墨弁別等詳細な調査を行った。なおこの調査は完了しなかったため、次年度改めて行う予定である。また他に『遺跡講式』『涅槃講式付舎利講式』の閲覧も行った。 第二回調査高野山大学図書館 平成15年8月25日〜8月27日。『阿弥陀講式』『薬師講式』の閲覧を行った。複写はCD-ROMで参照可能となっている。 第三回調査和歌山県桃山町興山寺 平成15年9月14日〜9月15日。真言宗寺院興山寺に所蔵される聖教類の調査を行った。そのうち『十二月聲明講諸講法則集』を写真撮影し、研究資料として利用できる状態にした。 第四回調査神奈川県立金沢文庫 平成16年1月14日〜15日。『南山進流聲明集』を閲覧した。本資料も金沢文庫資料全書により影印が刊行されているものであるが、調査によりその詳細を確認できた。 第五回調査上野学園日本音楽資料室 平成16年1月16日。『弁財天講式』『涅槃講式』『十六羅漢講式』の閲覧を行った。これらについては研究用途の複写が認められた。 現在この調査による資料等を使用し、南山進流声明譜における仮名「ム」と「ン」の使い分けについて論じた論文を執筆中である。また写真撮影したものについては、画像データベース化作業が進行中である。
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