研究概要 |
本年度は,基本的な資料収集,ツール開発,パイロットスタディ的な小規模のデータ収集・分析を行った. まず,中心となるコーパス(British National Corpus,以下BNC)サーバを構築し,ブラウザベースで検索・統計処理ができる分析ツールBNCwebを用いて,大規模コーパスを柔軟に検索・分析できる環境を整えた.KWIC表示や共起語のリストの生成などができる,基本的なデータ処理を行うツールをプログラミング言語Perlで作成し,データ収集の自動化を図った. 次に,新語彙の例として,ドイツ語からの借用語を取り上げ,Oxford English Dictionary(以下OED)をはじめとする大型電子化英語辞書を使用して,データ収集・分析を行い,定着過程を解明し,これまでに明らかになっていた日本語からの借用語とは異なる過程を経て英語の語彙として定着していくことを示した.また,借用語と既存語彙との共存・競合関係を明らかにするため,対象とした借用語と同じ意味を持つ同義語についても同様に調査し,4パターンの共存・競合関係を明らかにした. さらに,ノーザンアリゾナ大学では,未公開の通事的コーパスARCHERと,アメリカ英語版BNCとなるAmerican National Corpusの一部公開された部分を用いたデータ収集を行った.これまで,語の歴史的変遷をOEDなどの歴史的原則に則った辞書以外で確認することや,借用語などの比較的低頻度の語彙の英米語間での用法の違いを量的に分析することは困難であったが,これらのコーパスが利用できたことにより,実際の英文テキストから多くのデータを得ることができた.
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