研究概要 |
本年度は,昨年度構築したコーパスサーバの検索範囲をさらに拡張し,British National Corpus(以下BNC)からだけでなく,複数コーパスから必要なデータを一括して抽出できるように自動化を図った。これにより,一回の検索でBNC以外の英語コーパス(LOB, FLOB, Brown, Frown)からもデータを得ることが出来るようになり,大規模な検索作業を効率的に行うことができるようになった。 昨年度のパイロットスタディに基づいて,検索語彙を選択し,先述のコーパスサーバを利用して,語彙の競合関係について検索,用例収集,分析を行った。その結果,特定の同義語ペアについて,用法・使用範囲の違いが明らかになった。例えば,tsunamiは80パーセント近くという圧倒的多数が「自然科学」の分野で気象用語として使用されている一方で,tidal waveは様々な分野で実際の波以外のこと,例えばa tidal wave of supernatural horrors(「超自然的恐怖に襲われること」)のような様々な感情のうねりや,the rising tidal wave of crime(「急速に増加する犯罪」)のような大きな動きを形容して比喩的に,「余暇」や「芸術」の分野でも多用されていることを解明した。 さらに,現在進行中の取り組みとしては,以下の二つがある。一つは,昨年度収集したARCHERコーパスからのデータの分析を進め,Oxford English Dictionaryなどの歴史的原則に則った英語辞書による調査以外の方法で,語彙の歴史的変遷を知る機能を検索・分析ツールに組み込む方法を模索していること,もう一つは,American National CorpusとBNC, BrownとFLOBなど,同じ形式で作成された異なる年代の英米のコーパスをペアで調査し,語彙使用の英米差を解明できるように,検索・分析ツールの改善を行っていることである。
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