前年度に行った探索的調査(被調査者:大学生10名)で収集したプロトコルデータと内省報告データを用いて、非教師の日本語母語話者にとって遂行困難な日本語分析行動を整理し、意識化や補強の必要なものを抽出した。特に、"例文作成→例文分析→言語特徴への抽象化"という基本的な日本語分析手順のうち、『例文分析』に見られる特徴や問題点を整理した。その結果、作られた非文を検討することで情報を得るという分析行動が、日本語母語話者にとって困難度の高いことがわかった。そこで、教員養成の初期段階においては、非文ではなく正用文となる例文を優先的かつ積極的かつ利用しながら日本語分析を進めていくということを、被養成者となる日本語母語話者に習熟させるべき『目標分析行動』と考えるべきである。 また、日本語分析行動に関する日本語母語話者への明示的指導の効果について実験で検討する計画だが、実験に先立ち、分析課題とする日本語の選定とその特徴整理を行った。日本語は、「つい/うっかり/思わず」の類義語3語と、「ゆっくり/ゆったり/のんびり」の類義語3語である。そして、辞書や参考図書などを用いて類義語群の弁別的特徴を整理し、特徴リストを作成した。特徴リストは、実験で被験者が行った類義語分析の結果を得点化するために用いるものである。また特徴リストについては、日本語教師2名の協力を得て、リスト中の特徴記述に関する妥当性や点数化作業の問題点などを点検した。
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