本研究では、外国人日本語学習者がどのように日本語の文章構造の理解像を得ているのかに関して、要約文生成のデータをもとに理解過程と理解像の関係に焦点を置いた。「起承転結」をはじめとする日本語の文章は、循環的論理構造で、読者依存型の文章理解であり、外国人における日本語学習や文章理解に影響を及ぼすことが指摘されている。このように、読み手に対して負荷のある文章構造をもつ日本語を、外国人日本語学習者がどう理解しているのか、また、読解途中のどの場面で理解につまずき、どのような全体像を構築しているのか実際のデータをもとに考察した。また、日本語母語話者の要約文作成課題と読解過程との対応について考察を行った。Top-down strategyが多く用いられている段落は、外国人日本語学習者が理解できていなかった段落と一致していた。Top-down strategyとLocal coherent strategyは相補的に用いられていた。母語話者の場合には、段落によって読解ストラテジーが使い分けられていた。日本語母語話者のデータから、読解過程において整合性のある場合にはBottom-upとLocal coherent strategyが並行して用いられ、整合性がつかない時にはTop-down strategyを用いて文章全体の文脈と整合性をつけようとする、あるいは話題が転換されていると判断して文章全体の中に位置づけていた。それに対し、非母語話者の場合には、一部の意味を間違って解釈し、それを全体に拡大解釈したため誤った解答につながっていた。非母語話者は文章全体からのフィードバックを利用する能力が欠落していた。読解過程における部分要約の履歴と全体の要約文をもとに、読解過程と理解像としての文章構造の相関を考察し、文章構造に即した読解ストラテジーの選択の重要性を指摘した。
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