平成15年度は、研究計画に沿って研究対象とした時期の新聞からラジオプログラム欄の抜き出し作業とそのデータ化を進めた。計画では対象期間のすべてのプログラム欄をデータ化する予定であったが、1943年の新聞記事からラジオテキストの抜粋を発見したことで、計画の進め方を修正し、テキストの分析を行った。朝鮮におけるラジオテキストの入手は、現在までのところ、達成しておらず、この記事は貴重な発見であった。この発見を元に、シンガポールのラジオ講座用テキスト、南方向けに編纂されたラジオ講座用テキストとの内容比較を行い、2004年に「ラジオ『国語講座』と『国語』教育」として『アジア社会文化研究』に発表した。 ここでは、朝鮮という地域を取り上げた学校教育との通時的比較から仮名遣いについて論じ、また1940年代半ばという時期を取り上げ、上記のシンガポールおよび南方向けのテキストの学習項目の配列と仮名遣いを共時的比較から論じた。 この縦軸と横軸からの検討により、朝鮮におけるラジオ講座は、「国語」の規範を教育する、換言すれば、学習効率(「国語」の定着)よりも、精神的な同化を目指した教育であった学校教育とは異なり、「国語」の普及を目指した効率重視の教育であったことを明らかにした。仮名遣いについては、すでに学校教育という枠の中で、朝鮮と内地の比較をして朝鮮独自の仮名遣いから内地への統一という形で「国語」の統一が果たされたことを明らかにしている。 朝鮮人家庭へのラジオ普及率が3パーセント弱という状況で、ラジオ講座がどれほどの影響を与えていたのかについては、今後も検討を重ねていく必要のある課題である。 なお本研究は、5月に開催予定の2004年度日本語教育学会春季大会において、口頭発表する予定である。
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