平成16年度の計画は、以下の3点であった 1.ラジオプログラム欄の調査とデータ化作業。2.日本語教育に関する記事のデータ化。3.現地調査。 このうち、2については熊谷明泰氏による平成15年度文部科学省研究費補助金(基盤研究(C)「植民地化朝鮮における徴兵制実施計画に伴う「国語常用・国語全解」運動の展開様相」)の成果として『朝鮮総督府の「国語」政策資料』として公表されたため、第一及び第三に重点を置いて計画を実施した。 具体的には、ラジオプログラム欄の抽出作業はプログラム掲載欄の複写作業を精力的に進め、1936年〜1942年、1943年〜1945年分を終えた(2005年3月末現在)。データ入力作業は並行して進めているが、まだ2年分の入力が終了したにとどまる。また、現地調査では当時の放送局に勤務していた方への直接のインタビューを行うことができ、来年度以降、継続して調査の協力をいただけることとなった。テープの文字化は、来年度行いたいと考えている。この現地調査での成果を挙げると以下の通りである。 まず、資料としては長年行方を追っていた『朝鮮放送協会報』の大部分のコピーをいただけたこと、これによって、創氏改名を主な原因としていた人物の追跡困難を克服する手がかりが得られた。さらに、KBSにおいて放送史編纂に携わった方へもインタビューを行えたことにより、入手していた放送史関連資料の誤謬について、詳細な対照資料をいただき、且つ、多くの示唆と教示を与えられた。 次に、「国語講座」の放送内容については、平成16年度の日本語教育学会春季大会で発表したように、「毎日申報」に掲載されていたテキスト抜粋から推測していた段階から、番組名が特定できないまでも、番組担当者が具体的にどのように番組を進めていたかについて、記憶をたどった証言が得られた。インタビューを録音したテープの文字化で公表できると思う。 最後に、直接ラジオ講座には関連しないが、当時の学校における「国語」教育の実態について、インタビューを受けた方から一つの事例が得られた。その方の人物史と合わせ、ラジオ講座の位置づけを検討する材料が得られたと考えている。
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