研究概要 |
昨年度の調査から,現在小学校でどのような形で文字導入がなされているか,また韓国などでどのようにアルファベットが導入されているか,などが明らかとなったが,それとともに,小学校での文字指導に関する諸問題をについて明らかにするためには,まず文字の有効性を測るものさし作りが急務であることがわかった。 本年度は,まず文字の有効性を測るものさしとして,多角的語彙習得モデルを考案した。これは音声・文字・意味を相結ぶ双方向の関係(文字→意味,意味→文字,文字→音声,音声→文字,意味→音声,音声→意味の6つの技能)習得が語彙習得であるというモデルであり,(1)これらの関係は一度に習得されるのではなく,ひとつづつ習得される,(2)それぞれの技能には相関関係がある,ということが仮定されている。 このモデルをもとに,本年度は1つの実験とアンケートを行った。実験はフラッシュカードに絵のみが描かれているもの,絵と文字が両方かかれているもの,どちらが語彙習得に有効か,というものである。結果として,(1)意味→音声の技能習得には文字は有効である可能性がある,(2)絵に文字を添えたフラッシュカードを用いると,絵だけのものに比べて一度は覚えた語の忘却が進みやすい,という傾向が見られた。またアンケートでは,小学生に馴染みが深いと思われる語(30語)を抽出し,二種類の調査用紙で実施した。ひとつには語彙の日本語の意味が書かれており,もう一つは語彙のスペリングが書かれている。これらを用いて,上記多角的語彙習得モデルにおける4技能(文字→意味,文字→音声,意味→音声,意味→文字)を調べ,結果としては,特に高学年の児童にはかなり文字が浸透していることなどがわかった。 今後は,6技能の相関関係を詳細に分析することにより,音声中心の小学校英語に本当に文字を導入すべきか否か,ということがかなり明らかになるのではないかと期待できる。
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