前年度に引き続いて、日露戦争前後の日本外交を研究した。先ず、日露戦争研究全般における現状と課題については、歴史雑誌『歴史評論』に寄稿、掲載された。また、日本人の日露戦争観が太平洋戦争後、どのように形成されてきたかを主に映画を素材にして分析した論文が、日露戦争研究会編『日露戦争研究の新視点』(成文社)に収録された。また、平成17年5月に慶応大学で行なわれた国際シンポジウムにおいて、日露戦争観の変遷に関する英語の研究報告を行なった。この英文ペーパーは平成18年にオランダのブリル社から刊行予定の英文の論文集に、また日本語訳は横手慎二(慶応大学)編の論文集に、それぞれ掲載される予定である。 次に、当該期の日本外交の背後にある政策決定の特質に関しても研究を行った。その結果、1893年の諸改革(外交官試験の導入など)以来、外務省の「自律性」が徐々に獲得され、第一次世界大戦中には、外務省が外交政策を独占的に行なうべきとの意識(「霞が関外交」観)が形成されたことがわかった。この成果は歴史雑誌の『歴史学研究』に投稿、掲載された。 また、平成17年度は、第一次世界大戦後半期の日本外交の研究を進め、日露戦争から第一次大戦いっぱいの時期の日本外交のラフ・スケッチを、平成17年9月に東アジア近代史学会によって開催された日露戦争シンポジウムにおいて発表した。この成果は、ゆまに書房から平成19年度に刊行予定の論文集に掲載されることになっている。さらに、1900〜19年における日本外交全般に関する見通しがついたため、研究をまとめて早期に出版することを計画している。
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