近年、7世紀の木簡が相次いで出土しており、『日本書紀』『古事記』などの編纂史料ではわからなかった新たな知見が得られつつある。しかし7世紀木簡に書かれた文字は癖の強いものであり、釈読はたいへん困難を極める。そとで本研究では、全国の7世紀木簡に関する情報を広く、収集したうえで、書風を中心に検討をおとなうことにした。本年度も前年度に引き続いて、飛鳥・藤原地域の木簡を中心に整理・研究にあたったが、釈読の過程で全国の文字史料にも広く目配りをした。 具体的な成果は次のとおりである。 (1)近年出土した飛鳥・藤原地域出土木簡(石神遺跡、藤原宮跡)の最新の釈文を『飛鳥・藤原宮発掘調査出土木簡概報18』に公表した。 (2)飛鳥寺南方遺跡出土木簡の再検討をおこない、概要を『木簡研究26』で執筆した。 (3)「飛鳥・藤原地域出土木簡の表記について」と題する口頭報告を、シンポジウム「古代日本語を読む-東アジアの文字環境」第3回(奈良女子大学)でおこなった。 (4)「石神遺跡出土の木簡をめぐって」と題する口頭報告を、考古学研究会関西例会でおこない、その成果を一部含み込んだ概要を『木簡研究26』で報告し、また下記11に掲げた論考を発表した。 (5)飛鳥池遺跡出土木簡の整理をおこない、木簡1点ずつの詳細な検討結果、および「木簡からみた飛鳥池遺跡」と題する論考を『飛鳥池遺跡発掘調査報告書』に執筆した。 (6)酒船石遺跡出土木簡の1点ずつの詳細な検討結果をおこなっており、新年度刊行予定の『酒船石遺跡発掘調査報告書』に研究成果を掲載する予定である。 (7)「律令交通制度と文字」と題する論考を『文字と古代日本3』に執筆した。
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