研究概要 |
(1)本年度の海外渡航調査は,ドイツ連邦共和国(ベルリン科学アカデミー・トゥルファン研究所)所蔵ウイグル語文書資料を主たる対象とした。当該資料については,これまでに数次にわたり訪問調査を行なってきたが,昨年度に公開されたWorld Wide Web上の画像データベースを通じて未実見資料の存在を多数知り得たために再訪問を行なったものである。その結果,対象とした約100件の社会経済文書資料について,画像では不鮮明なテキストを原文書の実見に基づき解読するとともに,形態的・古文書学的な情報を収集することができた。さらに,昨年度のトルコ共和国(イスタンブル大学)訪問調査で知り得た,第二次大戦中に消失したとされるドイツ旧蔵資料の写真複製についても,その原文書のいくつかが現存することを確認できた。 (2)当初予定を変更して,昨年度に引き続き連合王国(大英図書館)への訪問調査を行ない,主にマイクロフィルム資料を利用してウイグル語・モンゴル語文書資料をほぼ網羅的に把握した。 (3)国内研究機関に所蔵されるロシア所蔵漢文文献の写真複製資料集を調査し,これらの漢文文献には,少なからずウイグル語との合璧文献が含まれていることを確認した。この結果,ロシア所蔵のウイグル語社会経済文書の基礎的データ収集を本年度でほぼ完了できた。 (4)代表者の所属研究機関には,本研究課題に関係する図書が十分に備えられていない。日常的な研究環境を整備するため,これらの関係図書を中心として物品費を支出した。 (5)これらの海外・国内調査で得られた資料情報をデータベース化するとともに,歴史再構成を目的としたテキスト校訂作業に従事している。また,学術的知見の一部については,次々項に掲げる研究論文として公表した。
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