研究概要 |
平成16年8月から9月までほぼ一ヶ月間をかけて,ベルリン国立図書館,ドイツ連邦文書館,ブランデンブルク州立中央文書館ならびに旧ドイツ民主共和国国家保安省文書館において史料収集を行った.本年度の研究の重点は,申請時の研究計画書の項目2,つまり「軍事/警察機構の内部状況」の分析にあてられた.具体的には,隊員の社会構成,志気,退職・職務放棄者の割合,年齢構成出自,国防軍への従軍の有無,ナチスへの所属等の政治的信条等々のデータを収集・分析することによって,軍事/警察機構の構成員の当時のドイツ社会との関係を社会史的に解明することをめざした. 調査の重点となるべきブランデンブルク州立中央文書館,国家保安省文書館ともに,充分な時間的余裕を見込んで史料の閲覧を申し込んだにもかかわらず,閲覧希望者が多数であること,ならびに関係者のプライバシー保護のための膨大な行政的な措置が必要となっているという理由のために,見込んでいた分量を大幅に下回る史料の閲覧しか許可されなかった.文書館側から,さらなる史料閲覧の許可自体は得ているので,17年度にさらなる史料収集を進める予定である. また当該研究テーマの部分的成果として「ソ連占領地区・ドイツ民主共和国における再軍備政策の展開 1945-1956その組織的変遷を中心に」を発表した.当該論文では,15年度の調査で収集した史料を下に,以下のような新たな知見を得ることができた.1)1947年末までは,ソ連軍占領地域においてなされていた警察の活動は純粋に警察的な措置にとどまるものであり,軍事的な性格はなかった.2)1947年末から1948年初頭にかけて,既存の警察組織の一部を,軍事組織化することによる再軍備政策が開始された.3)こうした開始された再軍備措置は,ドイツ問題をめぐる国際情勢の変化によって,必要ならばいつでも中止することを当初から念頭においた措置であった.4)再軍備をめぐるソ連軍占領地区の動きは,対外的に見れば,国際情勢に対応して変化するフレキシビリティの高いものであったが,国(占領地域)内においては,SEDの権力を確固たるものにするという一貫した目標に従事するものであった.
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