研究概要 |
屋外における調査研究としては,夏期に島根県匹見町内に所在する石ヶ坪遺跡の発掘調査を行ない,縄文時代後晩期の住居跡を1棟検出すると共に,この住居跡内部に存在した土坑内の土壌をウォーターセパレーションにかけ,炭化物の抽出を行なった。現在この炭化物は鑑定中である。また,住居跡内における俵化物の広がり方を検証するために複製土器による煮沸実験を行ない,そのデータを収集した。 さらに石ヶ坪遺跡から出土した石器の使用痕分析を,島根大学所蔵の金属顕微鏡によって行ない,当時の人々がイネ科植物を集中的に切断していることを突き止めた。また発掘調査によって九州地方よりもたらされたと推定される土器が多量に出土したため,この土器の製作地を究明すべく,土器内に含まれている鉱物の分析を行なっている。これについては,在地の粘土を使用した可能性もあるとの結果が出ている。 これらの発掘調査の結果は2004年2月に行なわれた考古学研究会岡山例会および3月に行なわれた島根考古学会例会において発表をしている。 発掘調査以外では,山陰地方とくに島根県域における石器の資料収集を行ない,その使用痕のあり方および各遺跡における石器組成のあり方について検討を加えている。これらの成果は2003年6月に開催された第14回中四国縄文研究会においてロ頭発表し文章化されている。また,石器組成の検討については,島根考古学会誌第20・21号に発表をしている。
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