研究概要 |
本年度は屋内調査の比率が高く,多くの時間を出土土壌の洗浄および炭化物の抽出と分析にかけた。これは,栽培作物を特定しようとしたためである。 屋外における調査研究としては,夏期に島根県匹見町内に所在する広戸遺跡の試掘調査を行ない,縄文中期から弥生時代後期にかけての包含層を検出すると共に,この包含層中から検出した焼土面付近の土壌をウォーターセパレーションにかけ,炭化物の抽出を行なった。炭化物を年代測定したところ大体弥生時代後期の年代が示されている。現在この炭化物の内容およびその種類については検討中である。 さらに石ヶ坪遺跡から検出された墓と考えられる土坑内の土壌をリン酸分析にかけ,土坑が貯蔵穴であった可能性についても,比較検討を行なった。その結果,墓などに見られるような高濃度のリン酸の存在は確認されず,土坑の性格をより慎重に考古学的に再検討する必要性も出てきた。 また,石ヶ坪遺跡から検出された各土坑内および住居跡内より出土した炭化物をAMS法によって年代測定を行なった結果,2σ歴年代範囲として2820BC-2560BCの値を得ることができた。この値はおおよそ縄文時代中期末から後期前半頃にかけての年代とほぼ一致するものと思われ,今後の出土土器及び遺跡,遺構の年代付けに対して,さらなる検討を促するものとなった。 以上の研究に加えて,昨年度以来継続している石ヶ坪遺跡から出土した石器の使用痕分析を,島根大学所蔵の金属顕微鏡によって行ない,当時の人々がイネ科植物を集中的に切断していることをほぼ明らかにした。ただし,このイネ科植物の内容については,平成17年度の調査において,さらなる検討を重ねる予定である。
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