研究概要 |
神奈川県平塚市六ノ域,神奈川県茅ヶ崎市南谷原遺跡・下ヶ町A遺跡,東京都あきる野市瀬戸岡遺跡群,青森県むつ市江豚沢遺跡からえられた土壌サンプルについてフローテーション作業をおこない,分析結果を報告した。前3遺跡からは,遺跡発掘担当者の協力により大学での処理能力を大きくこえる多量のサンプルを得ることができたため,一部のサンプルの水洗・種子同定を分析業者に委託しておこなった。江豚沢遺跡をのぞく遺跡からは,イネ・ムギ類と雑穀類,マメ科植物を中心とする組合せの炭化種子が多量に検出され,先史時代から古代にいたる植物利用を考察するうえで貴重なデータを収集することができた。また,これまで関東地方では弥生時代の収穫具がいかなるものであるのかを石器使用痕分析から確認する作業がおこなわれていなかったが,群馬県中野谷原遺跡から出土した弥生時代中期の打製石器のなかにイネ科植物の収穫・除草具と考えられる使用痕を有するものが含まれていることを確認することができた。このほか,東京都あきる野市水草木・東原遺跡におけるフローテーションと種子同定についての協力をおこない,中部弥生時代研究会における研究発表や『多摩のあゆみ』誌上においてフローテーションの方法と意義を解説し,その技術移転と普及の努力をおこなった。来年度の分析に供するためのサンプルもあわせて収集し,青森県田舎館村垂柳遺跡・神奈川県平塚市大会原遺跡からのサンプルを預かり,準備段階の乾燥作業をおこなった。
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