本年は、古代の鬼瓦と鴟尾の資料集成が中心になった。 鬼瓦に関しては、奈良地域、以前に行なっていた平城宮と南都七大寺から出土した資料について集成を修正し、大阪からの出土資料の集成を行なった。また、古代の東北の鬼瓦資料についても集成し、そのなかで重要と思われる奈良時代末から平安時代の資料については実際に現地に行って実見し、実測などの調査を行なった。特に、北上市・国見山廃寺や多賀城出土資料では遺跡の状況や遺物についての調査を行ない、奈良時代前半に成立した平城宮式鬼瓦、奈良時代半ばに成立した南都七大寺式鬼瓦の影響がそれぞれ東北にまで及んでいることがわかり、さらにその分析を踏まえて屋根形態や鬼瓦の使用位置等についても明らかにすることができた。 鴟尾に関しては、資料集成を進めたほか、特に法隆寺の鴟尾についての調査を行なった。法隆寺の創建期の鴟尾と、それ以降の鴟尾にはほとんど時期差がないにもかかわらず技術系統の断絶があること、創建期の鴟尾は飛鳥寺の工人の手によるものが明らかではあるが、パルメット唐草文や珠文帯などの文様装飾が多用される点、非常に厚手で大きい点など文様や製作技法のうえで古代の鴟尾の中では特異な位置を占めることがわかった。 以上のような成果は次年度以降に成果として順次発表していく予定である。 また、これまで調査済みの資料に関して、情報(特に写真)をデジタル化して保存するための作業にもとりかかっており、次年度も進めていく予定である。
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