本研究の所期の研究目的に従い、今年度は、(1)全国的な文献調査と事例候補地の選定、および(2)事例調査の両面を展開した。 (1)については、山村自治体史や林制史資料などの購入・閲覧を進め、その検討を継続している。また事例候補地としては、現時点では、すでに着手している山形藩のほか、焼畑検地に関連する史料に富む津山藩および熊本藩を候補として考えている。両藩では、近世初期の検地から焼畑に関わる地目が設定されていながら、いまだその内実については十分な研究がなされていないためである。 (2)については、昨年6月、山形県立図書館を中心として山形藩とその周辺の史料、地籍図などを収集・検討することができた。東北地方に特異な「カノ」と呼ばれる畑作のあり方を、歴史地理学的に再検討すべく、その成果の公表を準備中である。ただし、10月における報告者の所属の移動(愛知県立大学から京都大学へ)に伴い、9月から12月の間、旅費執行が困難となり、他の事例地や地方の県立図書館を訪問することができなかったのは、報告者にとって予期せぬことであり、遺憾である。しかし平成16年度の調査に備え、今年度中にデジタルカメラを購入した。
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