日本の高齢者福祉の中核的役割を担うものとして介護保険制度が2000年4月より施行されて3年が経過し、2003年4月からはいわゆる第2期介護保険事業計画期間に突入した。この間、全国的に見てサービス利用状況は当初の見込みを大幅に上回る勢いで増加しており、結果として65歳以上の高齢者から構成される第1号被保険者によって負担される保険料への影響も大きく、社会的な関心を集めている。サービス給付の伸びが保険料水準の上昇に結び付く制度的特性のため、とくに小規模自治体などでは保険財政の安定化を狙いとして複数の市町村が連携して保険者となるケースが珍しくない。しかしながら、本来は域内でのサービス基盤の分布や家庭内介護力などに関する地域格差ゆえにサービス利用の活発さが市町村によって異なる状況にもかかわらず、保険料を構成市町村間で均一化させることは、負担と給付に関する公平性をかえって損なう可能性も考えられる。本研究ではこうした点をふまえて、複数の市町村で構成される広域保険者(広域連合および一部事務組合)における市町村別の負担と給付のバランスについて検討した。 2003年4月時点で、全国に72の広域保険者(市町村相互財政安定化事業構成団体を含む)があるが、福岡・佐賀県などで見られる広範囲に渡る保険者や知多北部広域連合(愛知県)・くすのき広域連合(大阪府)などを除いて、その大半は農村部を中心とした中小規模自治体からなる。東海地方3県(岐阜・愛知・三重)について資料の得られた10保険者を見ると、構成市町村別の第1号被保険者数と給付実績とから各市町村単独での保険料を試算した結果、構成市町村間での格差が1.5倍未満の広域保険者が6地域ある一方で、残りの4保険者のうち1地域は最大で2.43倍もの格差が見られた。また市町村相互財政安定化事業について検討した結果、人口規模の大きな自治体ほど負担割合が高く、より小規模な自治体の保険料を支えている状況が明らかとなった。
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