研究概要 |
2004年8月8日から9月3日まで,中国雲南省の昆明・石林・大理・麗江・シャングリラ・徳欽をめぐり,主要な民族観光地において,土地利用調査ほか観光地形成過程を跡付ける現地調査を行った。 石林では観光土産を生産するサニ族の集落・世帯所得調査を行い,過去何度か見学したことのある火把節を再度観察した。火把節は以前と比較するなら,過度なまでに娯楽・体育イベント化かつスペクタクル化されているものの,昆明-石林間の高速道路が整備されたため,国内観光客を中心として高い集客力を獲得していた。 大理・麗江では,観光客の集まる市街地において,観光施設に着目しつつ土地利用調査を行った。両地域では歴史文化的景観の修復・創造が急速に進み,オーセンティシティに配慮しない一種の歴史文化テーマパーク化とも言える傾向が確認できた。また,観光施設が集中し観光客が集まる地域と地元住民の生活空間が住み分けられているものの,前者が後者を侵食する形で急速な観光地化が進んでいることも確認できた。観光地化がすでに進展している地域では,地元住民の経営する観光施設が減少しつつあり,外来商人が流入し経営する事例が多いことも聞き取り調査で明らかになった。 シャングリラ・徳欽は,2003年に世界自然遺産登録された「雲南保護区群の並行する三本の河川(三江併流)」の中心地である。シャングリラ市街地の中心部には大規模なホテルが建設され,旧市街地およびその周辺にバックパッカー向けの宿泊施設やレストランなどが集積しつつある。観光施設の経営者には外来の者が多い。シャングリラ郊外には優良な観光スポットと空港があり,シャングリラは「三江併流」・「四川・チベット周遊」の観光拠点としての成長が見込める。「三江併流」の持続可能な観光開発を進めるためには,拠点となる観光都市を形成するとともに,それ以外の地域では観光開発を厳しく制限する必要があろう。
|