研究課題
平成16年度は、フィリピンのビサヤ漁民による島嶼間マイグレーションとネットワーク構築、またビサヤ民俗社会に遍在する力の民俗観念の諸相と、そこから導き出せるマイグラント達の社会関係とアイデンティティに関して、これまでに収集した基礎的資料の分析に基づき、研究の焦点をさらに明確化することに努めた。特に本年度は、フィリピン地方社会のローカリティと国外各地に形成されるフィリピン人のトランスナショナル・コミュニティとの結び付きに注目し、従来のビサヤ民俗社会というローカルな日常と急速に進展するグローバリゼーションの絡まり合い・相克の諸局面に焦点を移すことになった。そこからは香港、シンガポールなどのアジア諸国、あるいはサウジ・アラビアなどの中東諸国への出稼ぎ契約労働、あるいは北米、カナダなどへのミドル・クラスの移住などの現象が顕著なものとして浮かび上がり、とくにこれらグローバルなフィリピン人のコミュニティとの結びつきによって生じるフィリピン国内の新たな消費行動、階層再編とアイデンティティ模索の実践などの動態が、さらに追求するべき新たな問題群として浮かび上がってきた。このような新たな焦点と問題群を対象に、平成17年度の最終年度においては、ビサヤ地方社会のローカリティと国外のディアスポラ的なフィリピン人コミュニティとの紐帯に注目し、人々のアイデンティティ構築の日常的実践をより総体的に分析し、具体的な民族誌的状況に即して記述することを試みる。
すべて 2004
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Communities at the Margins : Labor Migration, Environmental Degradation and People's Survival Strategy (Ateneo de Manial University Press.)
ページ: 193-221