本年度は中国上海の某日中合弁企業におけるフィールドワークを行い、主なデータ収集として当該コミュニティー構成員のインタビュー(録音)と会議のビデオ撮影を行った。当該コミュニティー(企業)の関係者で日本在住の者に対してもインタビュー(録音)を行った。随時ポイントと思われる部分を整理しながら研究活動を継続する一方で、整理済みのデータに基づいて研究論文の執筆及び国内外の学会において5つの研究発表を行った。その際に他の研究者からのフィードバッグを受け現在継続中の研究活動に反映させている。 研究前に予想した様に、当該コミュニティーにおいて「目本(人)」や「中国(人)」といったカテゴリーや両者のいわゆる「文化的な違い」というものが、コミュニティー構成員の異文化コミュニケーション体験の意味や当該コミュニティーにおけるアイデンティティーを決定するわけではない、ということがインタビューから確認された。ほとんどの構成員にとって、誰彼が「○○人」であるということそのものよりも、誰彼がプロフェッショナルとしてどのように自分と接するか(指示をするか/受けるか、チームワークを築くか)ということの方が(異文化間)コミュニケーシヨン体験を意味付ける上で重要なことであることが明らかとなった。また、そのようなコミュニケーション体験の意味付けにおいて、「○○人」であることの「意味」は多重的かつ流動的であり、必ずしも個人の文化的帰属を示すわけではなく、しばしば(異文化)コミュニケーション体験を象徴する記号としての役割を持つことも明らかとなった。 以下、学会発表した研究題目の一部である。 ●「文化の違いと共有の意味-異文化間コミュニケーションにおけるコンフリクトの回避に注目して-」 ●「Intercultural Experiences as Related to Organizational Orders : A Study of a Chinese Japanese Joint Venture」 ●「文化相対主義からコミュニティー文脈の重視へ-異文化間コミュニケーシヨン研究の課題と方法-」 ●「Matching of Gestures : Creating and Communicating Common Ground」
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