研究概要 |
今年度の研究活動・実績は、以下の3点にまとめることができる。 (1)第15回国際エチオピア学会(7月21日〜25日,独ハンブルグにおいて開催)において、「歴史的ギベ・オロモ諸王国におけるナッガーディエ(商人)の宗教的役割」と題する論文を発表した。 (2)パリの国立図書館において、1860年代にエチオピア南西部を訪れたフランス人旅行家Antoine d'Abbadieの手記などを参照し、一部複写を入手した。同旅行家は、エチオピア南西部における当時の主な市場の地名と長距離交易商人の行程、更には市場で売られている商品等について書き留めている。しかしながら時間の都合上、一部しか参照できず、再度資料参照・収集のために赴く必要がある。 (3)現地調査のために、エチオピア南西部に1ヶ月間ほど滞在した。前半は、10年前筆者が全戸調査を実施したジンマ地方の一農村を再訪し、生活状況の変化を知るために再度全戸調査を実施した。後半は、ジンマ地方の北部リンム地区を訪れ、ナッガーディエ(商人)のナスリ・サブクラン歴史に関するインタビュー調査を実施した。ナスリは同地域におけるジャコウネコの飼育をナッガーディエ・クランに認可したという伝説をもつサイイド・ナスラッラーの子孫クランである。 エチオピア南西部のコーヒー栽培農村において、市場は、自然栽培の食糧を補充する上で必要不可欠であるばかりでなく、税金・教育・衣服・医療,など近年益々必要性を増している現金を獲得する機会を提供する上でも、また相続する土地をもたない次男以下の男子が仲介商として生計を立てていくためにも重要な場となっている。定期市あるいは市場の変容は、農村部の国家への編入過程や小農の食糧安全保障の側面について研究する上で重要な課題であることが確認された。
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