1 供養絵額、遺影奉納の分布の調査について 遠野市を中心とする岩手県中央部における供養絵額、肖像画、遺影写真の奉納習俗について、まず分布の傾向を把握するため、盛岡市、東和町、北上市などいくつかの寺院について聞き取り調査を行った。そこで、現在では基本的に奉納習俗を取りやめ、遺族などに変換している、もしくは処分している寺院が多いことがわかった。さらにこうした奉納は檀家におけるすべての死者について行われるわけではなく、子供や青年男女、若い母親、自殺者など天寿を全うしない死者に関して奉納する傾向が見られることが明らかになった。今後は全体的な分布と絵額等の奉納習俗のない地域の供養法について検討する必要がある。 2 供養絵額、遺影奉納の変遷の調査について さらに遠野市博物館の協力を得て、遠野市内で所蔵されている供養絵額資料の把握をすることができ、絵額の内容から死者の年齢や傾向などについて現在調査を進めている。こうした事例の中で宮守町長泉寺についてはすべての絵額や遺影写真について個別に撮影を行い、絵や写真などの内容などを把握することができた。現在過去帳を調査中であり、死亡日や年齢などデータの照合を継続して行う。また絵額や肖像画は地元の絵のうまい人など必ずしもプロが描いていたわけではないことが明らかになった。 3 山形ムカサリ絵馬習俗及び欧米のメモリアリズムについて 一方、山形県山形市、村上市を中心に分布するムカサリ絵馬については、現地調査の結果、結婚の様子を描いたムカサリ絵馬よりも前から、死者が寺社へ参詣をする様子を描いた絵馬を奉納する習俗が先行しており、この場合には未婚の男女だけではなく、母子などの画像もあり、天寿を全うしない死者に対する供養として行われていることがわかった。欧米のメモリアリズムについては、現存文献を収集し調査中である。
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