(1)鎌倉幕府の裁判実務において、和与を認可する趣旨で訴訟両当事者に対して発給される和与認可裁許状に関して、これが引用の対象とするところの、訴訟両当事者から提出されて来る和与状の内容との関連について、詳細に調査を行った。また同時に、和与状の紙背に施される当該担当奉行人による裏書の意義についても、和与認可裁許状および和与状との相互関係から検討作業を行った。 その成果は、西村安博「鎌倉幕府の和与認可裁許状における和与状の引用について」(『同志社法学』第56巻第5号、2005年1月)において明らかにした。 (2)鎌倉幕府の裁判における和与・私和与・謀書に関する訴訟当事者の意識および裁判所の判断の仕方について、陽明文庫所蔵の近衛家領丹波國宮田荘をめぐる訴訟関係文書を主な素材として明らかにした。 その成果は、西村安博「鎌倉幕府の裁判における和与と謀書について-近衛家領丹波國宮田荘をめぐる訴訟関係文書を主な素材として-」(『同志社法学』第56巻第6号、大谷實教授退職記念号、2005年3月)において明らかにした。 (3)鎌倉幕府の裁判関係史料群として、東大寺図書館所蔵の東大寺文書、前田育徳会尊経閣文庫所蔵文書および国立公文書館所蔵内閣文庫を調査することにより、東大寺領周防國与田保関係の史料群の原本史料の複写物を蒐集した。 また他方では、財団法人本間美術館所蔵の市河文書の原本調査に基づく裁判史料の整理および検討を進行させた。このときにはあわせて、国立国会図書館所蔵の同文書の影写本および東京大学史料編纂所架蔵影写本および京都大学文学部日本史古文書室所蔵影写本などを調査した。 以上の成果は、2005年度中に、研究報告書(自費出版)としてまとめる方向で検討している。
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