言説をコントロールするための技術的手法について実態調査・情報集積を行なった。効率的で公正なコミュニケーションのあり方については法学的・哲学的理論の調査研究を行なうほか、経営学における研究実績の調査を行ない、また社会学における研究成果の調査研究とその法哲学理論への応用を試みた。具体的な係争となった事例についてはデータベースなどの資料を利用した調査を行なった。また、これらの調査研究をもとに論文の公刊・研究会発表などの手段による成果発表を開始した。 理論的成果としては、レッシグのアーキテクチャ権力論とライアンの監視社会論を伝統的な自由論に結合させることによって現代社会で問題となりつつある配慮の強化と主体の喪失という現象の本質的問題点を指摘したことが挙げられる。すなわち監視社会化の真の問題点は監視テクノロジの強化にあるのではなく、それらによって行動を先取り的に予期することによって主体の行動可能性が無意識のうちに制約されていく点にあることが指摘された。この理論展開についてはさらに責任論との結合を試みており、すでに部分的には研究会発表において公開しているが、さらなる展開が期待される。
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