今年度は、本研究の初年度として、ドイツの公的介護保障制度およびその運用実態の把握を主眼に置いた研究活動を行った。まず、介護保険法施行後のドイツに関する基本文献その他資料の収集を行い、これらを順に読みながら、ドイツの公的介護保障制度の現状に関する認識を深めた。また、昨年9月には、ドイツに出向き、ドイツの公的介護保障の現状に関する現地調査とヒアリングも行った。この調査では、民間非営利の福祉事業者のみならず営利事業者に対してもヒアリングを行うとともに、各種老人ホームの視察と施設長へのインタビューを行った。その結果、ドィツにおいて、介護保険法施行後、福祉市場への民間参入が相当程度進んでいる実態や、ショートステイの施設ではニーズが高い割には使い勝手が悪いため閉鎖に追い込まれている所が目立つこと、また介護保険以後、福祉施設への立入検査等の行政機関による監督権限が強化されるに至っており、これがサービスの質確保に上って相当程度効果を発揮していること、福祉施設における利用者の施設運営参加権行使の実態に関すること等について情報収集をすることができ、これらは大きな成果であった。また、この調査では、事業者が実際に使用している契約書の様式等の実務上の各種の書類も入手することができたため、サービス利用者への事前の情報提供の程度に関する資料が得られる等、有益であった。また、エアランゲン市の福祉担当職員へのヒアリングも行うことができ、介護保険制度の仕組みに関する理解を深めるとともに、民間サービスが主流となる中での行政の役割についても聞くことができた。以上の調査と資料で得られた知見をもとに、次年度では、本研究をまとめるべく、日本の現状調査および日独比較に重点を置いた研究を行う予定である。
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