研究期間であったこの2年間において、ドイツと日本の介護保障の現状について、情報開示・参加・協働という観点から研究を積み重ねてきた。初年度である昨年度には、介護保険法施行後のドイツの現状を把握するため、社会福祉行政を第一線で担う行政組織である市レベルの福祉担当者へのヒアリング調査と資料収集を行うと共に、わが国と同様に市場化の進展するドイツの現状をリアルに認識する必要性があることから、社会福祉サービスの経営者へのヒアリングを、非営利事業者のみならず営利事業者に対しても行った。そしてさらに、社会政策を専攻する研究者へのヒアリングと意見交換も行った。この結果、ドイツでは、市場化が進展した結果、非営利事業者の質的転換が進む一方で、福祉施設に対する行政的監督の強化がなされていることが分かった。このほか、市レベルで事業者への規制条例を整備する等の地方自治による福祉市場規制、行政が区域内の多様な供給主体によるサービスの現状把握を行う仕組み、そして利用者参加型の施設内自治の仕組みの現状についても調査することができた。これらの成果をもとに、2年目である平成16年度は、日本の問題状況の把握を行うとともにドイツとの比較検討を行った。その結果、日本では、サービスの第三者評価制度や、自治体やNPOによる福祉オンブズマンが行う権利擁護の制度や民間レベルの実践が蓄積されつつある反面、サービスの種類や対象者の類型ごとに縦割りの仕組みであることが多く、第三者評価やオンブズマンといった新たな制度や民間レベルの実践のいずれにおいても、真の意味での第三者性の確保がなされているとは言いがたい状況があるという問題に到達した。したがって今後は、権利保障過程の全体について研究を深める必要がある。
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