1.Bakke事件以前の、1970年代のアメリカの高等教育機関におけるアファーマティブ・アクションの実施状況について 最初の逆差別事件に関する判決以前のアファーマティブ・アクションの実施状況について、欧文資料を調査したが、そうした内容の文献は限られていた。この点に関しては、定評のある資料を軸に、限られた情報を加味して論文に概説せざるを得なかった。次年度以降も継続して資料収集に努めるつもりである。 2.Bakke判決以降のアメリカの高等教育機関におけるアファーマティブ・アクションの実施状況と憲法的論争 2003年6月末に、新たな最高裁判決が出されたため、判例状況と議論の状況の総括的な整理を試みた。 3.Adarand判決以降のアメリカの高等教育機関におけるアファーマティブ・アクションの実施状況と憲法的論争 2003年6月末に、Bakke判決のPowell意見に沿って、Michigan大学ロー・スクールの入学専攻におけるアファーマティブ・アクションを合憲とし、同大学の学部レベルの入学専攻におけるアファーマティブ・アクションを違憲とする2つの最高裁判決が下された。諸論文が、マイノリティーが被っているとされる不利益と、人種の相関関係が薄れてきていることを指摘する中での合憲判決、およびその判例理論は、あらたな議論を呼んでいる。 これら2つの最高裁判決は、2003年度の判例の中で、また、近年の平等保護にかかわる判決の中で特に重要なものであり、わが国の平等権理論を考察する上でも有用と思われる。そのため、資料的価値も念頭に置き、判例内容の紹介と分析に特に留意し、判決後の諸論文をフォローし、議論の動向を把握することを含めて雑誌論文にまとめた。 また、判決前の段階で、論争の動向を把握する意味合いを込め、下級審判例の評釈を行った。 次年度以降、アメリカでの最新の議論を参考に、平等権をめぐる法哲学的な理論の把握に努めながら、わが国での実質的平等の概念の位置づけに関する考察につなげてゆきたい。以上
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