本年度は、アファーマティブ・アクションの現状に関する研究を全体としてとりまとめる主材料の一つとして、主にマイノリティーの政治参加の場面でのアファーマティブ・アクションに関するリサーチを実施した。 マイノリティーの政治参加は、量的な票の希釈(quantitative vote dilution)、質的な領の希釈(qualitative vote dilution)に対して推し進められてきた。特に、修正15条に基づく1965年投票権法は、その強力なツールであった。しかし、一部改正された1965年投票権法のもとで、1990年代に、マイノリティーの代表者を選出することを目的としたマイノリティー多数区が積極的に創設されたことで、その形状の極端なものが人種的ゲリマンダーであるとの批判を受け、最高裁に持ち込まれた。その結果、人種的ゲリマンダーの合憲性審査基準がほぼ確立したといってよい。 その他、アフリカ系市民に重く影響する重罪者投票権剥奪法(felon-disenfranchisement laws)が問題視されていること、マイノリティー多数区の創設によって、逆にマイノリティーに好意的な民主党が全体として長期的な不振に陥っていることなど、考慮すべき問題も多い。 上記のほか、アメリカ最高裁長官の交代にともなって、Rehnquist Courtにおけるアファーマティブ・アクション判例の全体としての動向のサーベイを行った。
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