研究概要 |
国際人権規約とりわけ自由権規約の実施過程である個人通報審査手続において規約人権委員会が、個人通報を受理するにあたって規約さらには選択議定書の義務発生時(効力発生時)との関係で、いかなる対応をみせているかという点について、個別条文をとりあげて検討した。その際にはICJ,欧州人権裁判所、米州人権裁判所の先例と比較しつつ考察を加えた。その結果,遡及性(管轄権)については、ICJや他の条約機関と異なり、消極的に対応がみられるものの、いわゆる継続的侵害については、かなり積極的に条約効力発生時に違反行為又はその効果の存在があれば管轄権を認める判断をしている。しかしながら国内裁判所の行為をそのまま管轄権の根拠としていない点は義務違反の考え方について、1.国内救済手続の役割、2.国際人権保障にかかわる条約義務と各国家機関(とくに司法府)の役割との関係について再整理できるものであった。
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