研究初年度である本年度は、文献考察を中心に本課題に関する既往の到達点の確認作業を行ない、国民健康保険制度と生活保護制度(医療扶助)での問題構造の相違と介護保険制度と国民健康保険制度での問題構造の類似点を確認した。また、日本の実態調査として、国民健康保険制度の保険料負担と賦課基準に関する統計資料の分析や約200市町村の国民健康保険料減免規定の収集および分析を行なった。加えて、次年度以降の比較法的考察の予備的作業として、フランス社会扶助の基礎的文献収集を行なった。 今年度の研究の結果、低所得者層の医療保険の保険料負担について、(1)低所得者に対する現行保険料賦課額と保険料負担能力との乖離、(2)長期失業などによる生活不安定期における保険料減免制度の活用とその限界などが実証的に明らかとなった。そして、医療保険における低所得者の保険料負担にかかる問題に対して保険集団内の連帯や参加といった観点の必要性が明らかとなった。 今後検討を深める必要のある個別的な課題として、(1)医療・介護サービス保障と最低生活保障との関連、(2)低所得者の保険料負担能力と保険料賦課基準の設定にかかる法的問題、(3)保険財源の理論的検討、(4)保険者間の低所得者保険料負担の連帯的仕組みの可能性といった諸点が浮き彫りとなった。次年度以降は、これらの諸点についてわが国の実態を把握しつつ、比較法的観点から、フランスの普遍的疾病保険給付(CMU)の検討を行なう予定である。
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