| 研究概要 |
今年度は,主に次の三つの視点から研究を進めた。第一は,フランスの普遍的疾病給付(CMU)の法制度に関する検討である。受給資格者,受給要件,給付内容,費用負担について検討を行うとともに,制度成立にかかる国会議事録を参照しながら同制度の財政負担の背景にある思想と理念について検討を行った。第二は,日本とフランスの医療保険制度における財政負担の枠組みの比較検討である。具体的には,財政調整の方法,保険料負担と給付請求権の発生の法理などについて分析を行った。日本の医療保険制度の改革につき,法学的視点から財政負担の法理に言及する論文一本を公表した。第三は,フランスの社会保障制度における国民連帯概念の検討である。具体的には,重篤な医療事故の被害に対する国民連帯による補償制度の制定過程を素材に,社会的リスクと国民連帯による補償の財源負担論について検討を行い,現在論文一本を公表中である。
上記の三点について,研究を一定程度進めることができたが,普遍的疾病給付に関しては精緻な検討にまで至らなかった。この点については,次年度への継続研究課題としたい。
|
