従来、各国の国内問題に過ぎないと考えられてきた汚職は、近年のグローバル化に伴い、そのネガティブな影響を国際的に拡散しているとの現実認識を生み、国際的重要課題であると考えられるようになった。そして、そのような国際的な問題意識の結実として、平成15年度末、国連において汚職対策条約が成立した。本年はその間の経過や、審議の過程を調査することにより以下のような有益な知見を得られた。 1 まず、国連条約に至るまでの汚職関連国際条約について、資料を収集し検討を加える作業を行った。具体的には、OECD、米州機構、欧州評議会、EUにおける汚職対策の条約資料、および関連研究に当たり、それらの条約の意義あるいは限界を個別に分析を加えるとともに、それらを全体としてみた場合の、国際的な汚職規制の発展過程を明らかにするという作業を行った。 2 国連機関により条約準備のために作成された、汚職問題に関する基礎資料を収集・分析し、汚職問題の全体像、汚職対策に有効な各種法制度、それらの政策的基礎を明らかにする作業を行った。その作業によって得られた知見を、本研究の基礎とし、以下の3に挙げる個別具体的な汚職対策法制度について検討を加えた。 3 以上に基づき、汚職犯罪の犯罪化と制裁という問題について重点的検討を行った。外国公務員贈賄罪、私人間贈収賄、影響力取引などの国際条約上、処罰することが要請されている汚職行為および汚職行為に対する制裁について、その各種条約における取扱い、欧米先進諸国の現行法における取扱いを調査した。その上で、わが国の現状の汚職対策法制度における課題を明らかにし、今後の対策についての考察を行った。 4 以上すべてを、助手論文としてとりまとめ、神戸大学大学院法学研究科に提出した。平成16年度は、以上の研究を補充し、さらに考察を深めると共に、当該助手論文の公表を目指した作業を行っていきたいと考えている。
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