16年度は、15年度に行った、アメリカ、ドイツ、フランスの民事訴訟手続における、専門家の利用の仕方を参考にしながら、日本の民事訴訟における規律について研究を進め、公表を行った。制度論として、民事訴訟法における専門家の地位としては、裁判所が主導する型と当事者が主導する型があることを明らかにした上で、両者の関係について一般的に解明した。加えて、この一般論を前提として、現行の鑑定、専門委員、調査官、私鑑定制度などの問題点や、とるべき規律についても論じた。 なお、このうち、とくに特許侵害訴訟に利用される代表的な制度である調査官については、2004年7月に特許法、裁判所法、民事訴訟法制度が改正されたことにより、従来とは異なる新たな規律が設けられるに至った。そこで、新しい制度の導入経緯と併せて、前年度行った、諸外国、とくにドイツの特許訴訟における専門家の利用と、証拠収集制度について、神奈川県地方自治研究センターにおいて研究発表を行った。この発表内容については、後日紙媒体の形で公表する予定である。 また、将来、専門的な紛争については、民事訴訟手続のみならず、裁判外の紛争処理手続に委ねられることが期待されることに配慮して、これらの紛争処理手続をより推奨するために、アメリカやドイツで利用が期待されるようになっている証拠制限契約のあり方について考察を行った結果を論文の形にまとめた。証拠制限契約は、営業秘密が問題となることの多い専門訴訟においても、活用が期待されるため、この論文においては、これらの新たな意義に配慮しながら、その許容性について検討を行った。
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